
─ Harvesting and Drying the Wood ─
原木の調達と乾燥
─ Where Kaya Trees Grow ─
榧の木が育つ土地
榧(かや)は、ゆっくりと時間をかけて育つ木です。
百年、二百年という歳月のあいだに、雨を受け、風をまとい、
森の中で静かに年輪を重ねていきます。
かつて、綾町の照葉樹林にも榧は自生していました。
しかし現在では伐採が厳しく制限され、「日向榧(ひゅうがかや)」は極めて希少な存在となりました。
熊須碁盤店では、今もその貴重な木々への敬意を忘れず、
九州や四国など他県の榧を中心に、材を受け継いでいます。
木の産地が変わっても、森と向き合う姿勢は変わりません。
どの土地にも、その森なりの時間が流れ、
木の中には確かに「静かな記憶」が息づいています。
「榧は、どこで育った木でも、同じ“時間の重み”をもっています。」

─ Receiving the Gift of Wood ─
木を受け取るということ
伐採された榧が工房に届くと、職人はまずその木を見つめます。
年輪の流れ、節の位置、香り、手触り――
木の一つひとつの表情が、これからの形を語りかけてくる。
熊須碁盤店では、木を「材料」として扱う前に、
森の時間を受け取る者として、その命の続きを想います。
職人にとって、木を手にするということは、
自然からの贈り物をそっと受け取るような、静かな儀式でもあります。
「木を手にするとき、森からの贈り物を開くような気持ちになります。」
一本の榧を前に、職人は未来の碁盤の姿を思い描く。
その想像の中には、森で過ごした百年の時間が、確かに息づいています。

─ Drying in the Rhythm of Time ─
木の時間に合わせて乾かす
榧の材は、伐ってすぐには使えません。
水を多く含んだ木は、時間をかけて静かに乾かされていきます。
熊須碁盤店では、自然乾燥で約十年、木の呼吸を見守りながら、
少しずつ水分を抜いていく方法を選びます。
人工乾燥なら早く仕上がるかもしれません。
けれども、その熱が榧の香りと粘りを奪ってしまう。
だからこそ、木の都合を優先する。
「焦らず、木の呼吸を待つ。それも、職人の仕事のうちです。」
倉庫の中で、木はゆっくりと眠りながら、
森で育った時間をもう一度確かめている。
その姿を見守ることもまた、ものづくりの一部なのです。

─ The Time That Connects Forest and Workshop ─
森と工房をつなぐ時間
十分に乾いた木は、再び人の手に委ねられます。
鉋(かんな)の音が響く工房の中に、
森の香りが静かに満ちていく。
木を削ることは、森の記憶を次の形へ渡すこと。
百年の時間をまとった木に、人の時間が重なり、
ひとつの碁盤、ひとつの道具へと姿を変えていきます。
「森が育てた時間を、人の手で次の百年へ渡す仕事をしています。」
工房の光の中に立ちのぼる木の香りは、
森からの呼吸そのもの。
木と職人が同じ時間を生きていることを、
そっと教えてくれます。
榧は乾燥を経て盤材となり、
その後も削り直しによって長く使い続けることができます。
その考え方は「削り直しと再生」にまとめています。

─ The board crafting process ─
榧が盤になるまでの流れ
榧は、森で育ち、乾燥を経て、はじめて盤というかたちになります。
大まかな流れを、簡単にまとめました。
森で育つ
↓
原木の選定
↓
木取り
↓
天然乾燥
↓
仕立て
↓
盤の完成
それぞれの工程については、「榧が盤になるまで」でご紹介しています。

