
原木の選定
榧が盤になるまでの時間は、原木の段階から始まります。
まっすぐに育っているか。
大きな割れや曲がりがないか。
木目や年輪の状態はどうか。
ここで見ているのは、出来栄えの予告ではありません。
この木がどんな時間を重ねてきたか、という前提です。
木取り

木取りは、丸太を見て「どこを、何に使うか」を決める段階です。
盤に向く部分もあれば、別の用途に向く部分もあります。
同じ木の中でも、状態は一様ではありません。
どの部分を盤にするかによって、
その後に重なる時間も変わります。
この段階で、無理のない取り方を選びます。
木に合わせて、時間の使い方を決める工程です。
製材

木取りの判断にもとづいて、丸太を板にします。
板になることで、木目の流れがはっきり見えるようになります。
内部の状態も、この段階で少しずつ確かめられます。
ここでも主役は加工ではなく、素材の状態です。
木の様子に合わせて、形が現れていきます。
天然乾燥

製材された榧は、すぐには盤になりません。
時間をかけて、自然の中で乾燥させます。
急に乾かさず、ゆっくり水分を抜いていきます。
乾燥は、目に見える変化が少ない工程です。
それでも、木は少しずつ落ち着いていきます。
この時間があることで、
仕立ての段階で無理が出にくくなります。
仕立て





乾燥を終えた材を、盤として整えていきます。
まず、表面と側面を削り、
厚みと面を整えます。
続いて、裏面中央に「へそ」を掘ります。
盤の音や安定に関わる部分です。
その後、盤面に目盛りを引きます。
これを「太刀盛り」といいます。
日本刀の刃先を用い、
漆で直接線を引く工程です。
脚付き盤の場合は、脚を作り、
本体に脚を植えます。
それぞれの作業は、派手な変化ではありません。
形を誇示するのではなく、
盤として整えていく時間です。
ここで、はじめて盤の姿が定まります。
完成

盤としての姿が整い、ひとまず完成します。
しかし、ここで時間が止まるわけではありません。
盤は、使われることで少しずつ変化します。
石を受け、手に触れられ、年月を重ねます。
乾燥に長い時間をかけるのは、
その先の時間に耐えるためでもあります。
削り直しができるのは、
最初から無理をしていない材だからです。
完成とは、終わりではなく、
これから始まる時間の入り口です。
「削り直しと再生」へ。
